『塀の中の中学校』
半田保護司会が「社会を明るくする運動」の一環として、映画『塀の中の中学校』上映会を開いた。更生保護活動に理解を求めるための企画だ。アイププラザ半田で行われ300人ほどがご来場。
ぼくは先日「社明運動」の講師に呼ばれた際に誘われたこともあるが、もとよりこの作品を観たかったから喜んで参加した。
受刑者の中には何万人も義務教育を卒業していない人がいる。
「卒業していない人」でなく、「卒業できなかった人」や「中学にも通えなかった人」がいるということだ。
そんな人のために「塀の中の中学校」がある。
長野県松本市にある「松本少年刑務所」の中に実在する、公立中学校「松本市立旭町中学校桐分校」である。
映画はその「桐分校」を舞台にした「生徒(受刑者)」と先生との交流を描いたもの。脚本はフィクションだろうが受刑者の実態や舞台はノンフィクション。心に迫るものがあった。
罪を犯した者に多額の税金を費やして中学教育を受けさせることの賛否が以前、議論されたことは覚えている。
それは税金のムダ使いだ。それが更生に繋がると思えない。犯罪を犯すから中学も出られないのだ。
ー反対派の意見は概ねそれだ。
ー賛成派は「教育の機会均等」「犯罪者にも人権はある」「義務教育は国民の義務だ」。
難しい問題だが、犯罪はすべて自己責任か否かで変わってくるだろう。
最近、食えなくなった老人がわざと罪を犯し、刑務所に入るということがニュースなっていた。刑務所では野宿もないし、3度のめしは保証されるからだ。
ガンを患った男が犯罪を犯し、刑務所に。医療刑務所で治療をしてもらうという事件! もあった。
考えさせたられる事案だ。
これを聞いて「日本はいいな」と言った人がいたが、日本はいいのだろうか、それとも塀の外は暮らしにくい日本になったのだろうか。
『塀の中の中学校』を観ながらそんなことを考えていた。
上映中、会場からすすり泣きの声が何度も聞こえた。笑い声も何度もあった。スクリーンの中は塀の中。この笑いや涙が更生保護や社会病理の理解に繋がれば、と、ぼくは偉そうにも思ってしまった。
それはどうしてもこの手のドラマなどを観ると榊原亀三郎を思ってしまうからだ。
それにしても大滝秀治の演技は凄い。オダギリジョーや渡辺謙もよかった。