上皇陛下の晩酌の酒

昨年春、学習院大学に行った。取材である。お会いしたのは上皇のご学友たち。取材は『昭和史の隠れたドン 唐獅子牡丹・飛田東山』で書いた、終戦間際、飛田東山が陸軍高官から「皇太子殿下を(現上皇)を養子にして匿ってくれ」と頼まれた事実、その裏取りであった。

ご学友たちの証言は実に興味深いものだった。

きょうはその話でなく、その日お土産にいただいた名酒についてだ。

「上皇が晩酌に呑む酒だよ」

「えっ~。そうなんですか」

「櫻朶(さくらだ)と読むんですね」

「これは乃木希典にちなんでつけた名だよ。桜は学習院の花。学習院第10代院長だった乃木が「櫻朶丸」という船を院に寄付している。そんなところからの命名だそうだ。酒もうまいが、このラベルの書に値打ちがあるよ。「櫻朶」の揮毫は、東大寺の北河原公敬氏。北河原氏も学習院の卒業生だよ」

ちなみに『櫻朶』の蔵元は高知の司牡丹酒造。ご当主、竹村昭彦氏は、学習院大学の卒業生ということ。

いただいておいて言うことではないが、学習院一族が命名し、揮毫し、酒造し、学習院で限定販売。卒業生の上皇が呑んでいらっしゃる、下々を寄せ付けない気概を持つ有り難いお酒である。皮肉な言い方で失礼!

だからか、酒は超辛口。但し、酒は確かに美味い。上皇陛下が晩酌で呑む酒という先入観もあるだろうが、どこか高貴な味がするのである。有り難く、今夜もちびりと頂戴しよう。

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