南無女房 乳を呑ませに化けて来い
前回の「セキレイの川柳の解釈を―」に刺激され、古川柳を題材にした以前のエッセイを思い出した。
その一部を紹介する。笑ってもらいたい。
古川柳は面白い。実に面白い。江戸の世相がわかる。庶民の暮らしがわかる。それに当時の人の教養レベルの意外な高さに驚く。
これから掲出する句にニヤリとできる人をインテリという。ゴメン!
『芭蕉翁 ぽちゃんといえば立ち止まり』
言わずとしれた芭蕉の「古池や―」の本句取りであるが、かの芭蕉さえもおもちゃにされているのだ。
『五右衛門は生煮えのとき一首詠み』
釜茹でにされる五右衛門が、「石川や浜の真砂は尽きるとも 世に盗人の種は尽きまじ」と辞世を詠んだという芝居ネタを笑っている。
川柳らしい川柳を一句。
『屁をひって おもろくもなし独り者』
ただの屁の句じゃないことは解るよね。「おもろうて やがて哀しき独り者」 ですよね。
古川柳の名句の中の名句はこれだ!
『南無女房 乳を呑ませに化けて来い』
幼い子を残し、逝ってしまった女房への叫び。ちょっとウルウルしそうだ。「かあちゃ~ん!お化けになってでも出て来てくれ~」。
古川柳はいいが、現代川柳の名誉のために秀作を一句紹介する。これはどうだ!
『命まで かけた女て これかいな』
小生も身につまされるような句であります。
お後がよろしいようで。