地獄八景亡者戯
「脳梗塞記念日」その2である。
昨年10月6日の深夜、半田病院のICUで気を失っていた。
ぼんやりした記憶の中だが、ぼくは、どうやら地獄の入口にいるようだ。どこかで見たような、薄い煙というか靄というか、そんな中にあの世界が見えるのである。
こうして死ぬのだな……、と思っていた。
そこに川がある。「これが三途の川だな」と廻りを見ると数百人もの人が、やはり、ぼんやりと佇んでいる。
「この人たちもあちらの世界に行くのだ・・」。
そこへ船が来た。
船頭がいて、船賃を集めている。
「料金がいるんや」。
船頭がぼくに、「あんたは6400円!」と言う。
「えらい高いや」とぼく。
「タバコを吸ったやつは、ぱっぱ、64や。6400円!」と船頭。
「ぼくはタバコを10年も前に止めた」
「なら、半分でいい。3400円!」
「そりゃ半分と違うよ。半分なら3200円やろ!」
「うるさいやつだな! お前は乗せてやらない!」。
船はぼくを乗せず行ってしまった。
どうやらぼくは三途の渡しの船頭に嫌われたようだ。
「嫌われ者、世に憚る」
・・お後がよろしいようで。
以上は作り話のようだが、ぼくが実際にその夜、見た夢そのものである。
そして、地獄行きの三途の渡し船に乗り損ねたぼくは、何となく今は生きているのである。
近日のその3をお届けする。