大阪で食いだおれ、呑みだおれ。
久しぶりに大阪に行った。
日帰りしかできない日程だったので、すばやく午前中に所用を済まる。
これで昼めしと夕めしを大阪で食べられる。
今回、どうしても行こうと決めていたのは千日前の自由軒。もうすっかり有名になった「名物カレー」の老舗。
織田作之助が「夫婦善哉」で有名にした店だ。
ここのカレーライスは、ライスとカレーが最初から混ぜてある。
瓢吉が蝶子に言う、「うまいこと、まむしてあるやろ」の台詞が脳裏を走る。
台詞といえば、映画『夫婦善哉』のラストシーン。瓢吉と蝶子が法善寺のぜんざい屋から出たら、外は小雪。雪空を見ながら瓢吉が「おばはん、頼りにしてまっせ!」と蝶子に言う名場面の、あの名台詞は原作にはない。映画化の時に脚本家が書き足したものだ。
そのことを吉本新喜劇のプロデューサーと話したことがあった。
プロデューサーは、私なら、「おばはん、頼りにしてまっせ!」の台詞の後に、間髪を入れず、雪をドカン~と降らす。舞台には雪がいっぱい。「おばは~ん、助けておくれ~」。チャンチャンで幕。
と言った。
腹を抱えてぼくも笑って、なるほど、これが吉本新喜劇かと思った。
自由軒は満席。Aランチとビールにしようとメニューまで決めていたのに。少しぐらい待っても空きそうもない。それに入れても相席のようだ。きょうはそれは困る。
踵を返し、近所の洋食の老舗「重亭」にしようと行ったがここは閉店。
やむを得ず、第二候補の「立ち呑み屋」に入る。
ここも久しぶりに来たかった店だ。
「にいちゃん、いらっしゃい!」と、ぼくを「にいちゃん」扱いしてくれた。
陽のあるうちにへろへろになる。
ぶらりと法善寺に。
昔、こんな短歌を詠んだ場所だ。
何願うわけではないが法善寺
水掛不動に水掛けに行く
酔って、へろへろになってお不動さんに水を掛けた。
例のプロデューサーならこの場面、誰かが飛んで来て、ぼくの頭にバケツで大量の水を掛けるのだろう。
チャンチャン、幕。