忠臣蔵 勅使饗応料理の全て。研究者の徒労

ファイル 356-1.jpgファイル 356-2.jpg

 研究者が世の役にも立たぬことを夢中になって調べ、鬼の首を取ったように喜々として発表しているーー と、今さら自虐的に言うつもりはないが、忠臣蔵の季節になるといつも思い出すのは「勅使饗応料理」の献立を懸命に調べたことだ。そして、鬼の首を取ったように喜々として発表したぼくの姿だ。
 そんなもの、誰も興味を示さなかったのに。

 浅野内匠頭と吉良上野介の喧嘩のネタは数々語られているが、その一つは、勅使に出す料理だった。
 本膳料理か精進料理かのやりとりだ。その日に実際に出した料理の献立を調べた。ちょっと苦労したが次の献立だった。

 この献立を拙書『忠臣蔵と江戸の食べもの話』(新葉館出版)に書き、少々は話題になると思っていたが、見事、空振りだった。
 悔しいから、ここに書いておく。
 興味のない方は読まなくていいゾ!

 勅使の前に、まず三つの三方が出る。ここから会席の始まりである。
 三方の一つには敷紙に長熨斗。
 一つには雑煮椀、梅干盛、田作盛。
 三番目の三方は蓋置きである。
 その三方がすべて片付けられ、いよいよ三汁十一菜の本膳料理となる。

 ○本膳は、
 膾(鯛・よせ赤貝・白髭大根・木耳せん・栗生姜・金かん)。
 香の物(奈良漬瓜・守口大根・粕漬茄子・味噌漬人参・味噌漬なた豆・塩山椒)。
 煮物(ひらき鴨・色紙麩・つみせり)。
 汁(つみれ・しめじ茸・葉大根・薄皮牛蒡・めうど)。
 ご飯。
 ○二の膳は、
 杉箱(結えい・花形山吹・穂くわい・広岩茸・八重成・敷みそ)。
 小桶(のしもみ)。
 汁(鯛背切・木の芽)。
 酒浸(塩引鮭・もみしめ貝・黒くらげ・よりかつお・山川酒)。
 ○三の膳、
 差し味(鯉子付・かき鯛・えんす・海そうめん・くねんぼ・わさび)。
 煎酒。
 汁(わかめ)、茶碗(花みる貝・土筆・かけしお)。
 ○与の膳、
 向詰(小鯛・かけしお)。
 ○五の膳、
 洲浜台(大坂かまぼこ・みの焼あいなめ・あんかけたいらぎ)。
 平皿(甘鯛ふわふわ・みの笠茸・鍵わらび)。

 以上が、五の膳の三汁十一菜である。

 これが勅使饗応料理の全て。苦労して入手した原典通りである。
 しかし何だね。こんなものを長い時間と労力を費やして調べる、物書きや研究者は、淋しい人種だね。
 では、ご機嫌よう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です