新美南吉の下宿先

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 南吉が安城高女時代に下宿していた家が当時のままあるという。教えてくれたのは当会の顧問の大和黎生郎さん。彼と一緒に今さっき帰って来たところだ。
 下宿先は当時、南吉の同僚教師、大見さんのお宅。今は母屋と新家が敷地内に二つ建っている大きなお屋敷である。屋敷の入口は大きな門があるのだが、この門がこの地方独特のようで門というより小さな家(納屋)をくりぬいて門にしているという感じのものだ。その門の一角に部屋があり、そこが南吉の部屋であった。写真の左側、格子戸の部屋がそれである。
 6畳に2畳ほどの板の間の造り。2畳には簡単な湯沸しが出来る程度の洗面所兼台所があったと聞いた。ここで南吉は昭和14年から1年ほど住み安城高女に通ったのだ。学校までは2、3㌔はあるだろうか、当時は見渡す限りの田園地帯「日本デンマーク」である。
 ところで、この下宿の家主のところに南吉の高女時代の教え子たちがやって来て、「こんなみすぼらしい所に南吉先生がお住まいだった思われると嫌だ。きれいに直してほしい」と改修を迫ったという。
 教え子たちの気持は分からないでもないが、そんなこと南吉先生が喜びましょうかね?

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