東海近世文学会
久しぶりに東海近世文学会に出席した。病欠が続き、実に8ケ月ぶりである。例会場の熱田神宮文化殿会議室が懐かしく見える。
会場に入る。ありがたいことに各先生方からやさしい言葉をかけていただいた。また、司会の島田先生のご配慮で挨拶の機会をいただいた。感謝。
東海近世文学は東海地方一円の近世文学者の研究・発表の会。近世とは、大凡、戦国時代から江戸幕末までを指すが、その時代の文学の研究と討論をする。
今回は
①「御存知蕪村書簡」 永井 一彰(奈良大学名誉教授)
②「お伽草子『狐の草子』の怪異について」 沢井 耐三(愛知大学名誉教授)
のご発表。
永井、沢井両先生は学会を代表する権威で近世文学会の重鎮だ。
よい会からぼくはカムバックできた。
①の永井発表は、新発見した与謝蕪村の手紙から今まで分からなかった蕪村の係累の所在などが類推でき、蕪村作品の解釈も変わったというアカデミックなもの。
②の沢井発表は、お伽草子の「狐の話」の原典(典拠)を読むとみえてくる〈なまなましい話〉などなど。
沢井先生はこの研究に特化された学者。他では聴けない、さすがのご発表だった。今度、この話をパクって、どこかで話したいと思うほど実に興味深い講座だった。(=聞きたければ言って=笑)
終了後はいつものように懇親会。ここで議論の二次会。ここの方が本音の質疑応答の応酬があって面白い。
ところで某先生、「今の学生は忠臣蔵を知らないんだ」とこぼす。忠臣蔵を知らない学生に近世の文学や演劇を教えるのはさぞ苦労するだろう。
同じようなことが、ぼくの身にもあった。
雑誌のコラムで「清水次郎長」が登場する一文を書いた。原稿を送ると出版社の編集部から電話が。
「清水次郎長さんって、文章ではよくわからないので説明文を加えてください」
「清水次郎長って、あの次郎長ですよ」
「私、知りません」。
まさかと思ったぼくは、
「そこは編集部ですか。編集部員に訊いてみて、みんな知ってると思うから」。
しばしあって、
「お待たせしました。ここに5名いますが、全員、清水次郎長はどんな人か知らないと言っています」。
ああ~、愕然とした。時代は変わったのか。
そして分かった。出版社の編集部にいるのは一流大学出身の秀才たち。一流進学高、進学塾、一流大学と学んだが、どこでも「次郎長や森の石松は教えてくれなかった」のだ。学校で習わないものは知らない。テストに出ないものは知ろうともしないし、時間がもったいない。
そんなことだろう。
そして、忠臣蔵を知らず次郎長を知らず「近世研究」は構築されていくのだ。さて、数十年後はどうなっているのだろう。
久しぶりに生ビール3杯。ちょっと酔いました。