桜かな
ぼくの住む半田市乙川という地域は2万人近くが住む町なのだが実に何もない町だ。人も歩いていなく、時々見かける程度。華やかなことは年に一度のお祭だけ。後はじっと息をこらして、周囲に嫌われないように暮らしている……。
そんな乙川だが、駅前の桜は実に見事だ。
この桜は昭和18年に軍需工場・中島飛行機が半田市に進出、武豊線に「乙川駅」が誕生した時に植えたものという。
「桜の苗はもちろん、駅舎も、駅の中の金庫も、湯飲みも茶碗も中島が贈ったものだよ」と、かつての中島飛行機の工場長が言っていた。
あれから73年、中島飛行機はなくなったが桜は生きている。見るからに老大木。幹回りは数本重なり合って5㍍もあろうか。
誰が世話をするわけではない。
七十年ほったらかしの桜かな
である。だれか下の句をつけて歌を完成させてほしい。