狛犬おじさん
小さい頃、常滑焼といえば土管くらいしか思い浮かばなかった。大人になってから急須や招きネコもあることを知った。最近でこそ山田常山などという名前を覚えたが、作家と言えるような陶工が常滑に多くいることすら知らなかった。近頃、その常滑焼が我が家のあちこちに転がっているようになった。それは家内が趣味で「常滑焼もどき」を造っているからである。家内の腕はあやしいのであるが、その先生の腕は確かである。
だが、この先生が少し変わっている。手元に金がなくなり追い込まれると、仕事を始める。そして、出来上がった作品を多少安くても「さっさと」売ってしまうのである。或いは、大作が売れて、懐が温かいと「ちっとも」仕事をしない。そして、いそいそと競艇場へ出掛けていく。このおじさんが「狛犬おじさん」こと松下昌司さんである。狛犬や鬼を得意としているが、ひとたび注文を受けたならば、どんなものでもすぐ形にしてしまう確かな腕を持っている
この松下のおっちゃんが、つい最近「村上隆」から注文が来たらしい。松下のおっちゃんが「村上隆て誰だ?」と若手の陶芸作家に聞いた。そしたら、「それは世界的なポップアート作家で、今ベルサイユ宮殿で個展をやっている村上さんだよ」と答え、「おっちゃんは、すごいね」と言ったということである。注文は高さ80cmの狛犬ということである。
*写真はおっちゃんがつくった作品等