知多郡受刑人名簿
古文書は未知のことを教えてくれる宝箱だ。ワクワク、ドキドキしながら古文書の前に座り込む気分は何ともいえない。
「榊原弱者救済所」に関連する史料を探している時、こんなものを入手した。「知多郡受刑人名簿」だ。
時代は明治後期のもの。知多郡の受刑人(刑余者)を網羅してある。番地まで詳細な住所、氏名、性別、身分、そして罪状。差別意識も情報保護意識もない時のものだから、そのまんまの記載だ。
記載されている人の数は1千数百余名。当時の知多郡の人口は8万人にも満たないのだから、かなりの割合で「出獄人」がいたことになる。そんな時代だったのだろう。
如何に100年前のものといえど、オープンにはできない史料だが、1ページ、1ページめくっていくと明治の匂いとともに、人の暮らしと葛藤が、ぼんやりと見えてくるから不思議だ。
それは社会病理というものが雄弁に時代を語ってくれるからだろう。