在庫状態 : 在庫有り
- 著者 : 西まさる・高田みのり
- 体裁 : 四六判ソフトカバー・218頁
ISBN978-4-8237-1066-7
戦時下に日本有数の軍需産業地帯を襲った、隠された地震の悲劇の真相に迫る! 70余年を経て集まった被災の現場を知る300余の証言を初公開!
1944年(昭和19)12月7日に東海地方を襲った昭和東南海地震。一瞬のうちに1万3千余軒の家が全壊。2万8千余軒の家が半壊した。死者は1千人超。M7・9の猛威である。
しかし戦況劣勢の戦時下、国内有数の軍需産業地帯を有するこの震災被害を国は徹底的に隠蔽し「きょう地震はあったが被害は軽微」と発表。情報も厳しく統制した結果、昭和東南海地震の真相は闇の中へ消えた。
三重県から静岡県にかけて被害は広範囲に出ているが、最も被害が大きかったのは、東洋一の近代工場と呼ばれた「中島飛行機半田製作所」のある愛知県半田市。犠牲者の八割は同製作所に居た人たちだったにもかかわらず、その実態は正しく伝わっていなかった。
「家屋が波のように揺れ」
「二階建ての一階がなくなり二階部分が一階になり」
「地割れした道路から黒い水が噴き上げ」
「瓦礫の下から〝助けて〟の声がした」
「工場の長い廊下には、150体もの屍体が並べられ」
「火葬場が間に合わず土葬」
「軍隊式に何体も重ねて野火に附した」
地元の「はんだ郷土史研究会」は2005年と2021年の2回にわたり、この地震の体験者にアンケート調査を行った。対象範囲は半田市内から愛知一円、滋賀や長野にまで広がった。さらに「昭和東南海地震の実体験を聞く会」を2度にわたり開催し140名の参加し、多くの体験談が得られた。
本書の特長は、中島飛行機半田製作所の罹災状況の検証と復興および同製作所で働き、この地震で97名もの犠牲者を出した動員学徒についての記述である。同社に精通し、太い人脈を持つ『中島飛行機の終戦』(新葉館出版)の著者・西まさるだからこそ知り得た実録の数々。今回、昭和東南海地震の取材を機に知遇を得た中日新聞記者・高田みのり氏の協力も得て、およそ300件にも及ぶリアルな体験談を基に纏めたのが本書である。ノンフィクションを書く西とジャーナリストの高田のコンビが、300の声に耳を傾けながら書き上げた同書はルポルタージュの鋭い切り口をみせて真相に迫っている。
・・・これは愛知県の一地方都市の出来事だが、震災はいつどこにやってくるかは分からない。この一地方都市の出来事を他山の石とみてはいけない。あなたの町の問題でもあり、我が国の問題である。