知多半島の歴史研究の第一人者の著者が、前著『知多半島歴史読本』の高い評価を受け、続編を書き下ろした。
知多半島ならではの郷土事情を掘り起こし、地域独特の「農間稼ぎ(出稼ぎ)」の実態を丁寧に調査した点は特筆に価する。その結果現れた「知多の全村々の暮らしの様子」の一連が、郷土史研究としても民俗学的調査としても秀逸である。
具体的には、全国的に特殊な土木技術集団「知多の黒鍬衆」の実態を初めて明文化した一連は瞠目であり、貴重な記録である。
凶作で豊年でも苦労が絶えないこの地方の農民事情を鮮明に書き上げた「知多の豊年 米食わず」、「雨乞い」、「出稼ぎ」などは民俗学的興味にも加え、読ませる章である。
また、三方を海に囲まれる知多半島の人々の、海との闘いともいえる、「漁業の歴史」、「帆走船の秘話」「半島先端に浮かぶ宝石達のような島々」なども近世の地域史として欠かせない記録である。