アシュラー
アシュラーという言葉は、まだ一部でしか認知されていないが、若い仏像マニアのことをこのように言うらしい。もちろん興福寺の阿修羅像から来ているのであろう。歴女といい、アシュラーといい若い人が興味を持つのはいいことではあると思う。であるが、個人的には、家人の前で「この仏像の写実的表現が素晴らしい」などと勝手な薀蓄を披瀝して悦に入るのがとても気分のいいものだと思っている。あまり多くの人が仏像に詳しくなると、楽しみが半減してしまうような気分になる。
阿修羅があまりにも注目されているので、一番好きな仏像を変更しようかと思う。薬師寺の日光月光菩薩もなかなか素晴らしい。国宝第一号広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像も魅力的である。かつて京大の学生がこの像に恋をし、抱きついて指を折ってしまったという事件もあった。だが、当方ちょっとへそ曲がりな性格を持ち合わせているので、広隆寺の弥勒菩薩とそっくりな中宮寺の弥勒菩薩に決めようかと思う。この像も大変有名な像である。頭に双髻(そうけい)と呼ばれるかわいらしい二つの丸く結った髪型を配しているのがなんとも言えず良い。モデルは聖徳太子と言われているが、女性的な面差しの像からは太子の母穴穂部間人皇后の面影をその像に見たい気がする。
* 写真は中宮寺弥勒菩薩(伝如意輪観音)