佐吉は毎夜、錦三の常連
佐吉小伝⑧
佐吉先生はお酒が大好きでした。タバコは敷島というように、好きな酒の銘柄が伝わっていないところをみると、何でも良かったんでしょうね。だが、佐吉先生の酒の量はすごい。一升飲んでも二升飲んでも形を崩しませんでした。うそではありません。「豊田佐吉傳」にちゃんと書いてあるのですから。
佐吉先生はどうも一人ではあまり飲まなかった。いつも石川藤八、服部兼三郎という仲間といっしょだった。名古屋でいつもくり出す定宿が富澤町4丁目の「花月」。二日でも三日でも泊り込み、腰を据えて飲んだというから、三匹の「うわばみ」というところか。
富澤町4丁目は今の三菱東京UFJ銀行名古屋店。めんどくさいね、旧東海銀行本店の東のあたり。そうです。お父さんたちが大好きな錦三です。佐吉先生、藤八だんな、服部若社長が錦三で大酒をかっくらっていたのです。しかし、お父さんたちと違って上司や女房の悪口などは決して言いません。「わが国を良くするには、立派な織機を・・・」と言いながら飲んだんですぞ。
* 写真は明治43年の広小路通り栄町、「名古屋広小路ものがたり」より(佐吉たちが飲み歩いていた頃、結構にぎやかです)