南吉の彼岸花

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 新美南吉の里に彼岸花の季節が来た。
 200万本という。
 どこまでも続く、一面の真っ赤な絨毯である。

 南吉童話のごん狐が見たのは、この真っ赤な絨毯の上を進む、兵十のおっかさんの葬列。
 葬列の中にいる、いつも赤いサツマイモのような顔をしている兵十が、青い顔をしていた。
 それを見て、ごん狐は兵十を慰めようとして・・・

 の物語である。

 結末は、兵十の鉄砲でごん狐は撃ち殺される。銃の先から青い煙が上がり、ごんは死ぬ。…そんな悲しい物語なのだ。

 このように南吉のこの物語の表現は、赤と青で構成されている。
 そのどの赤も、どの青も、悲しい色である。

 しかし、平成の今、矢勝川沿いに咲く真っ赤な彼岸花の絨毯は悲しさを見せない。
 なぜだろうと思う。

 それは見る人の心の目の違いに他なるまい。

 あなたの今日見た彼岸花は、美しかった? 悲しかった?
 個々の持つ心象風景でその色への感受性が変わる。

 ・・・矢勝川の一面の彼岸花を見ながらの感想である。

 

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