平野勇造小伝

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 最近、「三井物産技師平野勇造小伝―明治の実業家たちの肖像とともに」という本をいただいた。横浜の山口勝治さんが書かれた本である。平野勇造という名前を知っているのは、よほど建築に詳しい方のみだと思います。そういう私も、山口さんのホームページを見るようになって、初めて知った人物である。
 山口さんには以前から、豊田佐吉についての隠れた資料を提供していただいている。今回、山口さんはこの本を書くにあたって、三井の膨大な資料を納めた三井文庫にまで足を運び研究されたようだ。まえがきに、「明治32年(1899)の日記に『10月13日豊田佐吉氏、本社上田理事面会ス』の記録がありました・・・」と書かれています。上田理事とは三井物産初代上海支店長もつとめた上田安三郎のことである。このシーンはまさに、乙川綿布合資会社の成功を受け、三井物産が豊田佐吉という人物を確認し見つけ出す場面である。
 平野勇造は今も残る「上海日本総領事館」をはじめとして、在華紡の工場を多く設計した人物である。豊田佐吉と三井物産、三井物産技師平野勇造。彼らの活躍した時代と活躍した上海という街に思いをはせてみたくなる。

*写真は上海日本総領事館の図版を表紙としている

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