極楽へ行った
あまり暑いので極楽へ行ってきた。
極楽は、中央線の恵那から明知鉄道に乗り替えて20分ほど。そうは遠くない。ほんとうの極楽もこれくらいお手軽に行けるのなら、まこと、ありがたいのだが…。
このところ極楽に縁がある。
今、懸命に書いている原稿が「吉原遊郭」。言わずと知れた「昼は極楽のごとく、夜は竜宮のごとし」の街。
それに、新吉原遊郭の開基に関わったとぼくが睨んでいる松本清十郎は、知多半島は須佐村の人。出自は須佐村の「極楽寺」に隣接する神社の神主の子である。
極楽、極楽の関係であるとしたい。
思えば、ぼくは子どもの頃、おばあちゃんから「おまえは極楽トンボやなぁ」と、年じゅう言われていた。何の心配もせず、苦労もせず、ふぅらふら、ふぅらふらと遊びまわっているさまを、そう形容するらしい。
まさに言い当てて妙。今現在も極楽トンボで女房に苦労をかけている。
おばあちゃんはよく働いた。昔の女性はみなそうだったが、朝から晩まで働きづめだった。
夜、床に入ると、おばあちゃん。
「世の中に 寝るほど楽は なかりけり、浮世のバカは 起きて働く。あぁ、極楽、極楽…」
と、口癖のように、呪文のように、その台詞を2、3回、口にすると寝息を立てていたものだ。
極楽、極楽。
きょうの極楽は暑かった。
温度計は41度を過ぎ、42度に達しようとしている。
ちょっと見にくいが、42度、すなわち、シニそうなどで極楽を後にした。
さて、極楽から戻ったぼくの行き先は、やはり、地獄のようだ。
お後がよろしいようで。