知多半島 郷土史往来
『知多半島 郷土史往来』が刊行された。
目玉記事は「明治天皇 乙川村行幸全記録」である。
この論文は、伝承や先入観、ポテンシャルへの挑戦でもあった。だから読み物としてもおもしろい。
「明治天皇が白馬に乗って来て、畑にいた農夫に道を聞いた。農夫は肥柄杓で道を指し、天皇に道を教えた」。
この話は地元で長く伝わっていたもので誰も異論を述べていない。それどころか公の書物にさえこれに近い記述があるほどだ。
肥柄杓とは糞尿などを汲んだりするもの。そんなもので天皇を指したりすれば首が飛ぼう。また、当日は豪雨、暴風雨。そんな日に農民は畑に行く? また、天皇自身が道端の人に道を尋ねる? 天皇がお供も連れずに知らない町に行く?
ちょっと考えれば分かることだが、その作業を誰もしないし、先入観で噂話を作ってしまう。天皇の馬は白馬でない。栗毛だ。間違った伝承はこうして生まれるのだ。
さて、こればかりではない。
伝承の誤りを正すと、出てくる出てくる変な話が。
ぜひ、本誌を読んで欲しい。1000円の値打ちは充分ある。