美しい国/日本
日本人は桜が大好きだ。庭木や山野の花々に目もくれないおじさんたちも、こと桜の花となると別。うっとりと花を見る。
何で桜が日本人の心をつかむのかは明白。
桜の花は辺り一面を染めるように一気に咲き、そして、その美しさはわずかな時間で消えてしまい、元の風景に戻る。その短期間のドラマが心に来るのだろう。
もし、桜が3ヶ月も咲き続ける花ならば、こんなに人気は出なかったろう。
そこに本居宣長が、
敷島の大和心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花
てな調子で、日本人の心は「朝日に匂ふ山桜花」だよ、などと言うから桜のポテンシャルが完成してしまった。
浅野内匠頭が切腹するのは桜の下
神風特攻隊が出発するシーンには桜。♪貴様とおれとは同期の桜~
ここでちょっと花見気分に水をぶっかける。
なぜ、桜の花はわずか10日ばかりで散ってしまうのか?
それは、花がいつまでも咲いていると幹の栄養分が無駄に失われて桜の木の成長を妨げるからである。桜の木の成長の早さは大きな樹木のなかで突出している。それは花に無駄な栄養を与えずに本体が中心になって生き残るすべをもっているからだ。
さっと咲いて、本体たる樹木のためにさっと散る。
さっと咲いて花の役目を素早く終えて、本体の邪魔にならぬように、さっと散る。それが桜花なのである。
お国のために、さっと散る。
だから美しき国、日本の象徴が桜なのである。
安部さんが「美しき国」のフレーズが大好きなのは、枝の先端の花を散らし、本体たる国を守り、国を成長させる。そのシステムが樹木本体(国の中枢)にとって、心地よく素晴らしいからなのだろう。
あまりしつこく言うと、高市総務大臣にこのブログを消されてしまうので、ここで止めるが、実は、桜は儚い民なのである。
乙川駅の桜は1週間ほど咲き、昨日から散り始めている。
早く散らないと幹に迷惑をかけるぞ! もう役目は終わったからさっさと散れ! あとは大木の下で肥やしになれ!
と、はっきり言ってくれと分かりやすいのだがね。
では儚き桜に同情して、花の下で一杯やるか。
杯に 散る花びらも 酒が好き