音吉伝 ー知られざる幕末の救世主ー 篠田泰之 著

凄い本が出た。『音吉伝 ー知られざる幕末の救世主ー』である。

何が凄い? これは新たなる日本開国記。まさに新視点の幕末の一コマを描いた本だから。

あらすじと読みどころを簡単に紹介する。

天保3年(1832)11月、時は幕末―。
14歳の見習い船員、山本音吉たち14人を乗せた千石船・宝順丸が江戸に向けて出発し、遠州灘で遭難。そのまま14か月ものあいだ太平洋を漂流した。漂流中に11人は死亡。
音吉ら生存者3人はアメリカ・ワシントン州に着岸。音吉一行は現地のマカ族に救助され、数ヶ月間、生活を共にする。
その後、幸運にも日本の開国の手がかりを探していたイギリス人に保護され、帰国の機会を窺いながら世界を転々とする。その間、ロンドンにも。ロンドンの土を踏んだ初めての日本人が音吉である。
天保8年(1837)、数々の出会いと経験を積んだ音吉は、漂流民の送還とキリスト教の布教を目的に日本に向かうモリソン号に乗っていた。船は非武装である。
漂流から5年、ようやく帰国できる。
懐かしい日本が見えたその時、音吉の乗ったモリソン号を迎えたのは砲弾だ。
異国船打払い令により日本側から二度の砲撃を受け、帰国を断念する事態に。

そのとき、落胆する漂流仲間に音吉はこう言った。
We will try again.
(もう一度やってみよう)。
この一言が、近代日本の開拓者として覚悟を決めた、国際人音吉誕生の第一声だった。
その後、音吉はイギリス国籍を取得しジョン・M・オトソンと名乗り、異国の地で才能を開花させ、ビジネスでも成功を収める。

世界初の和訳聖書を翻訳し、イギリス海軍の日本語通訳官となり、日本の近代通訳第1号となる。
また〝黒船〟に乗せられそうになっていた日本人漂流民を匿うなど、終生果たせなかった帰国への夢を他の日本人をサポートすることで果たそうとした。その言動から世界に日本型民主主義を示し、多くの外国人に直接、間接を問わず影響を与えたのである。
彼がいなければ、日本の歴史は大きく変わっていたことは言うまでない。

今までスポットライトが当てられなかった知られざる幕末の救世主、山本音吉の数奇な生涯を膨大な資料と取材活動から繙いた、新たなる日本開国記である。

 

●有名書店またはアマゾンなどネット書店で発売開始
●定価2,600円+税 606頁 新葉館出版刊

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です