零戦搭載のエンジンは「栄」

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 前のブログで「零戦搭載のエンジンは〝誉〟」と書いて、随分とお叱りを受けた。「零戦搭載のエンジンは〝栄〟」です。
 訂正し、浅学を恥じます。

 〝栄〟は中島飛行機製の高性能エンジン。16気筒だった。
 それを改良して18気筒にしたのが〝誉〟。「ワレニ追ヒツク敵戦闘機ナシ」の当時の世界最速機〝彩雲〟のエンジンである。

 ぼくが〝栄〟と〝誉〟を混同した原因は、中島飛行機の技術者のこんな談話からだった。言い訳を含め、紹介する。

 「戦争中期には、既に零戦はグラマンの敵ではなかった。誰も公には口にしないが、性能的にはるかに劣っていたことは技術者なら誰もがわかっていた」。
 「そこで〝栄〟を改造した高性能エンジン〝誉〟を開発し、〝紫電改〟〝零戦〟に積み、戦闘機の性能を上げようとした」。

 ところが、

 「エンジンの性能に他の機体性能がついていけない」
 「戦地では(中島の技術者がいないから)普通の整備士では誉のメンテナンスが出来ない」
 「戦争末期には操縦士の質も当然のように落ちていて、練習機と格段に違うエンジン出力に操縦がついていけない」。

 という不幸があった。
 そこで
 「〝誉〟はまるで欠陥エンジンのように言われているのが口惜しい」。

 これは、ぼくが取材した元技術者の談話である。
 今回、このページを書くにあたり、再度、取材を試みたが彼は黄泉の人となっていた。

 しかし、別のルートで知り合ったアメリカの大学を留学した科学者は、ぼくにこう言った。

 「米軍の関係者に聞いた話だ。開戦当時は零戦が強力な敵だったが、すぐ怖くなくなった。それは零戦のエンジン出力に機体コントロールがついていかない欠陥をみつけたからだ。零戦と向かい合う、グラマンは急降下する。零戦も急降下する。だが、零戦は加速がつきすぎて気体のコントロールを失う。もうグラマンの敵ではない」。

 そして護衛戦闘機を次々と失った日本軍はついに空母も失ってしまう。優秀な「艦上軍用機」は「艦」のない飛行機になってしまった。そして…

 つまり、零戦の性能を上げるため、更に強力なエンジンを積もうとした日本軍。
 零戦のエンジンは、既に機体にそぐわないほど強力で、それが欠陥だとみていた米軍。
 こんな構図だったような。

 さてさて、裏取りはこれからだが、中島の技術者と米軍の証言を重ね合わせると「新説」が生まれそうだ。

 再びのご批判を待ちたい。

*写真は空母「瑞鶴」沈没シーン。ここから敗戦色が濃くなる。

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